なぜ、人間にとって芸術は必要なのか。生きるために、どうしても必要な衣食住。それさえあれば、芸術などいらないではないか。そういった考え方は、はっきりいってつまらない。
芸術といってしまえば大袈裟な印象もあるが、洋服にも音楽にも好き嫌いがあることと同じ。要するに、多様性の表現が芸術であり、それは、人間だけが持つ価値観であるともいえる。
その中でも、脳に癒しをあたえるのは、論理的なものに対して、情緒的芸術だといえるだろう。それ自体には、明確なメッセージや意味を感じ取れない。しかし、それに触れると自分の経験や感情が反応する。
その反応には、理由や原因が掴みにくい。絵画や文学に触れると、何かいいと感じるとする。「何がいいの?」と問われても、明確なものはない。そして、その良さは、人それぞれで異なる。その遊びと奥行きの深さが芸術が芸術たる所以。
その「良さ」を感じるという意味では、自然の木々や生物も、また芸術だといえる。なぜか心が休まる、安心する。それは、心に反応している。意味があるとかないとか、損とか得とか。そうした考え方では、割り切れないもの。
それが、本来人間の求めているものと気付く。美術館などにいかなくても芸術には触れられる。そう、釣りに出かけて湖上に浮くだけでいいのだ。
