ビジョンを彫る

日本の企業の多くは、行動規範はあれど、ビジョンやミッションの考え方に疎いところが多々ある。自分の限界を超えて、大きな目標を達成するには、明確なビジョンというものが必要だ。

ビジョンといえば、理想を語る人もいるが、ビジョンとは、より具体的なイメージをいう。自分のビジョンであれば、何を着て何を食べ、何を語っているのかを具体的にイメージすることだ。

ビジョンという概念は、決して新しいものではない。夏目漱石の夢十夜の中で、運慶は、仁王像を彫刻することをこう表現している。

「像を彫ろうとしてはいけない。木の中に埋まっているその像を掘り起こすのだ」これは、ちょうど砂の中に埋もれた石を掘り返す行為に似ている。

その姿は、すでにそこにあるという考え方。それほどまでに、具体化されたビジョン。だからこそ、修正の利かない彫刻の世界で、臆することなく見事な仁王像を掘り出すことが出来る。

ただ、ビジョンだけでは目標は達成できない。それを実現するための「技」と「機会」が必要だ。そのために常日頃から技を磨き、わずかな機会をも見逃さないようにする。

ビジョン、技、機会。この3つを高次元で達成したものが、俗に言う「天才」といわれる人たちであろう。技の習熟度は、描くビジョンに比例する。何よりも、まずはビジョンを描くこと。

今、そこにあるように錯覚するほどの具体的なビジョン。砂の中には、どんな石が埋まっているだろか。それを考えるだけでも、楽しくなる。

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